卒業

私の所の、最も古株の生徒が、

大学受験の準備のため、

今月いっぱいで卒業することになった。

 

そう、彼女には、

敢えて“卒業”という言葉を使いたい。

 

5歳の時から、実に12年。

その間に、私は呉から広島へ転居し、

まだ小学生だった彼女は、

お爺様の送迎でレッスンに通った。

 

決して器用ではなく、

他の人が1ヶ月でわかることを、

5年かかってやっとわかるような、

そんな不器用な生徒で、

私は、正直なところを言えば、

もう長くは続かないだろう…と、

ずっと思い続けていたのだけど、

数年前から急激に力をつけ、

以来のレッスンは、

それまでのことが嘘のように、

実り多いものだった。

 

生徒がやめていく時の気持ちは、

自分でも不思議なほどに色々なもの…。

たとえ万全とは言えなくとも、

自分が伝えたかったことを、

幾ばくかでも、

伝えられた実感があったなら、

それは、最高の別れとなる。

 

このような気持ちで、

彼女を送りだせることが、

自分にはなにより嬉しい。

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