バッハに苦戦する人が多いので、
多声学の組み立て方について…。
話が複雑にならないように、
三声帯を前提に話を進めます。
まずは、一声部ずつを、
取り決めた演奏条件、
アーティキュレーションや運指、
強弱などで、十分練習することは、
言うまでもありませんが、
それ以前に、各声部の旋律を、
歌として歌えるように、
暗譜してしまうことが推奨されます。
特に三声以上の多声を、
一人で演奏すると、
音楽の基礎力が弱いと、
しばしば声部の混乱が起こります。
各部分で表に出るパートの旋律だけを、
無意識的に選んで聴いてしまうことで、
ある声部と別の声部が、
パッチワークのように、
繋げられてしまうからです。
三声では演奏できるのに、
各声部をばらして演奏したら、
まるで初めて聞くメロディーに思えた…、
なんて状態は要注意。
これは、グラグラした基礎工事の上に、
一見完璧なできばえの、
家を建てたようなもの。
小さな事故で崩壊してしまいます。
音楽を志した人であれば、
バッハの各声部を正しく歌い、
暗譜することは、
それほど難しくないはず。
多声の完全な演奏に到達する鍵は、
実は、この一番初めの段階にあると、
私は思っています。